今回はいつも一緒に活動させていただいているリハ医の望月亮先生が在宅リハビリテーションについてわかりやすく説明されていたので、先生の許可を得てまとめ記事を書かせていただきます。
開業医や訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション(デイケア)、訪問看護ステーションなど、「在宅リハビリテーション」に関わる職種は意外と多いのではないでしょうか。
特にリハビリテーションを専門としていない医師や看護師、介護保険サービスをマネジメントするケアマネージャーにとって在宅リハビリテーションについて知ることはとても大切です。
一般的に、病院での急性期リハビリテーションや回復期リハビリテーションでは、「治療中の廃用症候群を予防して自宅に退院する」「身体機能を高めて自分で出来ることを増やして自宅に退院する」といった、明確な目標が立てやすいです。
一方で在宅でのリハビリテーションは自宅の環境や経済面、個人の価値観などが病院に比べてより影響しやすく、目標設定が難しいと考えられがちです。
また、医師がいる診療所と療法士がいる訪問看護ステーションなどが別施設であることが多く、リハビリテーションを処方・指示する医師と実施する療法士がコミュニケーションをとりづらいことも多いでしょう。
だからこそ、多職種・多事業所で1人の患者さんについての方向性を一致させ、目標設定を明確にすることが大切です。
目標設定をするために、医師は診断をする必要があります。ここでは疾患の診断ではなく、「障害」の診断をすることが重要です(① Prognosis)。さらに、そこに患者さん本人やご家族の希望や価値観を反映させること(② Hope)、そして在宅生活を維持するために(希望とは合致しなくても)必要なこと・考慮すべきこと(③ Need)もあり、これらの①〜③を複合して目標を見出すことになります。
①障害の診断で重要なことは、機能予後を予測することです。つまり、この患者さんはどの程度動けるようになるか、食べられるようになるか、といったことです。栄養状態などの内科的な状態も考慮します。
②患者さん本人やご家族の希望や価値観で多いものとして「トイレに1人で行きたい」「〇〇が食べたい」といったものが挙げられます。その希望を叶えるためにどんな身体機能が必要か、あるいは代償手段が必要かを考えます。
③在宅生活を維持するためには機能予後を予測したり希望を聞くだけでは足りません。実際問題、介護負担や経済的負担がどの程度かかってきて、それに家庭が耐えられるのか、ということも重要です。
これらの①〜③をそれぞれ分解して考えることで、より明確な目標が設定できると思います。
さらに、目標は時期によって短期(3ヶ月以内)、中期(半年〜1年)、長期(1年以上)と分けて考えることも重要です。
在宅リハビリテーションでは長期間リハビリの指示を出しっぱなし、リハビリをやりっぱなし、という事例が多くみられますが、医師は処方したからにはどのようなリハビリが進められているかチェックすること、療法士はリハビリを実施した以上は内容や進捗を医師に報告することが必要です。
少なくとも1−3ヶ月に1回は情報共有する機会があると良いです。
それを義務的に行うのではなく、患者さんがハッピーになるために進んで情報共有ができるとリハビリテーションが前に進みやすいと思います。
ちなみに私の勤務先では訪問看護ステーションとSlackというオンラインツールで繋がっており、リハビリの報告書に加えてリハビリの様子を画像や動画で共有してもらうことがあります。
個人情報保護に配慮しながら、情報共有は積極的に行いたいものです。
その上で、複雑な障害像で目標設定が難しい症例や嚥下・装具などの専門的な介入が必要と思われる症例は積極的に地域のリハビリテーション科医師に紹介していただければよりよい診療ができると思います。
在宅リハビリテーションは私も関わり始めてまだ日が浅いですが、病院でのリハビリテーションに比べさらに発達途上でとてもやりがいがある分野だと感じています。
ぜひ情報共有、目標の共有をしながら患者さんがハッピーになることを目指しましょう!