今日は6月に発売された中山祐次郎先生初の医学書
「恥をかかない5年目までのコンサルト」を読んだ感想を書きます。
医学書ではありますが特に中山先生が執筆している第一章はとてもライトな読みものなので、一般の方にも理解しやすく、さらには医療以外の対人の仕事(ビジネスなど)にも共通するものが多いのでは、と思います。
今回は第一章を中心にレビューしたいと思います。
まず、「コンサルト」とは半ば医師の業界用語になっているものですが、「consult」(相談する)という意味です。
ある医師が患者さんの診療について他の医師に相談することを主に指します。
コンサルトの形としては、病院内であれば電子カルテ上で依頼状を書くことや、急ぎの場合は電話や直接対面で相談することが一般的です。
本書でも繰り返し強調されていますが、コンサルト(相談)を受ける医師の大半は中堅ないしベテランの医師で多くの仕事を抱えています。
したがって、特に電話でのコンサルトのコツの一つは、簡潔に要点を伝えることです。
本書では簡潔に要点を伝えるためのポイントが、3点挙げられています。
①結論から言え
②何をして欲しいか言え
③短く言え
(P11)
①結論から言え
日本人が話す日本語は、結論が大体の場合最後に来るようになっています。対して、英語の場合は結論が先に述べられることが多いです。
「〇〇(症状)で受診した○歳○性です」
「心電図で〇〇(異常)を認めています」
「〇〇(病名 特に急を要する)を疑っています」
のように、結論を序盤に話すのが原則です。
ただし、電話なので最低限の挨拶も必要です。
特に大きな病院ではコンサルトする先生と面識がない場合も多いので、上記を切り出す前に以下のようなコンパクトな挨拶をしましょう。
「リハビリ科のあつひろと申します。(〇〇先生、)診ていただきたい患者さんがいるのですが今お電話よろしいでしょうか?」
②何をして欲しいか言え
コンサルトされる側からすると、初めはわからないのは患者さんの状態もですが、コンサルトしてくる側の医師のレベルもわからないことがあります。
コンサルトする側としては、自分としてどこまでの検査や処置やできて(あるいはすでにやっていて)、どこからは自分ではできない、あるいは知らないのかをある程度伝える必要があります。
「腹痛を訴える25歳男性でCTを撮ったところ虫垂が腫れているように見え虫垂炎を疑います。一緒に診ていただけないでしょうか?」
と伝えると、
・虫垂炎を疑っていること
・CTの画像を読みとるのに自信がないため専門の医師に診てほしいこと
が伝わり、コンサルトされる側としても動きやすくなるでしょう。
逆に、全くわからない時はその旨を正直に伝えることも大切です。
「〇〇号室の患者さんが意識を失っています。血圧、脈拍は△△です。対応が分からないのですぐ来ていただけますか?」
と電話すれば、電話を受けた側は夜中でも一気に目が覚め、当直室から白衣をつかんで走りだすはずです。
③短く言え
①②で書いたように、忙しい医師には最低限の言葉で必要な情報を手早く伝えましょう。
それではもちろん患者さんについての全ての情報は伝わらないのですが、専門医や上級医は最初に聞いた情報から、これだけは電話で聞きたいと思うことは質問してきます。
「点滴は繋がっているか」「他には誰か応援はいるか」など、聞かれたことにわかる範囲で答えれば良いのです。
同時にコンサルトを受けた医師はコンサルトしている側の医師の技量を推測しています。
最後に、本書のコラムに掲載されていた「最高のコンサルト」というものをご紹介します。
外科医Aが手術前の患者さんについて、糖尿病の手術前後の治療について内科医Bに相談する、というシーンなのですが、以下のようなやりとりでした。
外科医A「あー先生いつもすみません、また大腸癌術前なんですが、糖尿病あって」
内科医B「はいはい、外来送って、見ときますね」
(P34)
とても簡素なやりとりですが、なぜこのコンサルトが最高なのでしょうか?
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、ヒントはこの2人の医師の「人間関係」です。
毎日の挨拶やちょっとしたコミュニケーションが仕事をやりやすくする最高の準備であることがわかります。
ご紹介した内容以外にもコンサルトにまつわる様々なテクニックや、第二章では胸痛、骨折などの様々な症状・病気におけるコンサルトについて、専門科の医師がわかりやすく解説しています。
ぜひご興味のある方はお読みください。
最後までお読みいただきありがとうございました。