今回は医師向けの内容ですが、医師の進路や生活に興味がある方にはおもしろい内容と思います。
1 医師の進路について
まず、日本で医師免許を取るために必要なこととその後の進路について解説します。
全国に82ある大学の医学部医学科を卒業する(または同じ年度に卒業見込み)ことで、医師国家試験の受験資格が与えられます。
医学部医学科は通常6年間のカリキュラムですが、別の学部を卒業した後の人は学士士編入といって医学部医学科は4年ないし5年間で卒業できるカリキュラムもあります。
医師国家試験は毎年2月に全国数カ所の会場で受験できます。
3月に晴れて合格すると、4月から医師としてスタートすることができます。
初めの2年間は「初期研修」という制度があり、全国の「研修指定病院」に定められた病院であればどこでも研修を受けることができます。
ただし、各病院には初期研修医の定員数が決まっており、人気がある病院などでは数倍の倍率で選ばれることもあります。
どの病院でも、夏から秋に面接や筆記試験があります。
これを「マッチングシステム」といいます。
ちなみにマッチングシステムに登録していない場合でも、国家試験合格後に定員に空きがある病院に申し込み研修することは可能な場合があります。
2年間の初期研修が終わったあと、臨床(患者さんを直接診る)の診療科を選択することになります。
大学の医学部にある「〇〇科医局」という組織に入るか、大学以外の病院に就職するパターンが多いです。
大学の医局に属すると、大学病院だけでなく関連病院(企業でいうところの支店のイメージ)への勤務を命じられることも多いです。
ちなみに医師免許を取得した後、初期研修を行わず研究職に進む医師もいます。
2 リハビリテーション医(リハ医)になるためには
数ある診療科の中で、リハビリテーション科はかなりマイナーな診療科です。
2018年度から「新専門医制度」というものが始まり、その中で19の基本領域というものが設定されました。
リハビリテーション科はその19の診療科の一つではありますが、専門医の人数は2番目に少なく約2500名です。
医師は全国に約30万人おり、その1%以下であることがわかります。
リハビリテーション科は、医師の中で正直にいうと人気がありません・・
その理由はいくつか考えられますが、医学部の教育や初期研修の中でリハビリテーション科を学ぶ機会が少ないことが挙げられます。
全国82校の医学部の中でリハビリテーション科の医局(講座ともいう)がある大学は半数以下です。
また医学部の講義時間の中でリハビリテーション科の講義が最も時間が短いのです。
人気がないというより、そもそも知られていないという現状がありそうです。。
そんな中でリハビリテーション科医になるためには、大学のリハビリテーション科医局に所属することがほとんどです。
大学病院や医局の関連病院をいくつか半年〜2年程度ずつ研修し、さまざまな患者さんを担当医(あるいは主治医)として経験します。
そして、以下の条件を満たした場合、リハビリテーション科専門医試験を受験することができます。
試験に合格すれば晴れてリハビリテーション科専門医となり、いわゆる一人前のリハ医といえます。
リハビリテーション科専門医試験を受験できる条件
・日本リハビリテーション医学会に入会している(毎年年会費あり)
・リハビリテーション科の指定施設で3年間以上研修している
・100症例以上経験した
・30症例のレポート(さまざまな分野)
・2回以上の学会発表(うち1回は全国学会)
3 リハ医になるのは初期研修後すぐ?それとも他科研修後?
多くのリハビリ科に興味を持ってくださる研修医の先生からいただく質問です。
結論から言うと、目指す方向性によるのかなと思います。
リハビリ科医の中でも、
①なんでも満遍なく診たい
②特定の分野のスペシャリストになりたい
③後進の教育がしたい
④実はリハビリ以外のこともやりたいけどリハビリのことも知っておきたい、経験したい
⑤とにかく臨床より研究がしたい
など様々な方向性があると思います。
私自身は①③④が該当します。
私は総合診療科で内科疾患のマネジメントを学べたことはとても貴重な財産だと思います。
整形外科や脳神経外科などを経てリハビリ科医になった先生も、それぞれ貴重な知識、経験が活かせるでしょう。
上記の②⑤タイプの先生以外は、リハビリ科に入りつつも短期間他の診療科もローテートできる環境があると良いかと思います。
ただ現状の専門医制度ではそうしたプランは難しいのかもしれませんが・・
実際にローテートはできなくても、手術や検査を見学したり教えてもらいに行くことはとても良いと思います。
リハビリ科にとらわれず、院内外の縦横の繋がりを持てば自分のスキルアップにも活かせるかな、と思います。
他科の先生とコミュニケーションを取るのはリハビリを依頼されたときなどがチャンスです。
リハビリ科医としてはこの患者さんにはこうなってほしいと思う、と自分の考えを伝えられるようになると先方も信頼していろいろお話ししてくれることが多いと思います。
ちなみにリハビリ科医は回復期病棟の主治医を担当することも多く病院によっては当直もありますが、急性期の内科や外科のように夜間の急変などのハードさはほぼありません。日中はもちろんとても忙しいですが。。
子育て中の方や持病がある方にも働きやすい診療科ではないかと思います。
以上、リハ医にいつなるべきかについて思うところを書いてみました。
ご参考になれば幸いです。