みなさんこんばんは。 学会などでしばらくブログが書けていませんでした。
今回のテーマは、患者さんの話を聴くということです。
医療者の中では「病歴聴取」と呼ばれます。
皆さんは病院を受診して医師に会った際、まずすることは何でしょうか?
ほとんどの場合、まず話をしますね。
目の前にいる患者さんがなぜ病院を受診するに至ったのか、それまでの「物語」を医師は知ろうとします。
私は内科医のとき、上司の先生に「病歴をとる際は自分の頭の中で再現ドラマを回すつもりでいなさい」と教えられました。
NHKの「総合診療医ドクターG」という番組で出てくる、患者さんの再現ドラマのイメージというとわかりやすいでしょうか。
さて、今回は回復期リハビリ病棟に多い脳卒中と骨折に分けて説明していきます。
回復期病棟に来られる患者さんは、必ず病気の名前がはっきりしています。 なぜなら、原則として回復期病棟には決まった病気でしか入院ができないからです。 それでも、私たち回復期病棟の医師は患者さんが転院してこられた際に詳しくお話を聞きます。
脳卒中の場合、多くは高血圧、糖尿病、喫煙、心房細動(不整脈の一つ)が原因であるため、患者さんの話は脳卒中を起こした瞬間だけではなく、どちらかというと元々の生活の様子(食事、運動、仕事、通院など)を中心に確認することが多いです。
一方、骨折の場合はどうでしょう。 骨折を起こした患者さんのほとんどは転んでいるか、何かの事故に遭っています。 したがって医師は患者さんがどのように転んだのか、どのように事故に遭ったのかを詳細に聴くことになります。 家のどこで、左右どちら向きに、など詳しく詳しく聴きます。 誰も見ていないところで転んでおり、ご本人がうまく答えられない場合も多いです。その場合は最初に発見した人に、どのような姿勢で、周りに何か原因となりそうな物事があったのか、などを詳しく聞き出すことになります。
なぜ、私たちは患者さんの話(病歴)にこだわるのでしょうか? それは、同じ病気や怪我を二度と起こしたくないからです。
例えば転んだ原因がめくれやすいカーペットだとわかれば、そのカーペットは改める必要があるでしょう。 また認知症があり一人で歩いた結果転んだのであれば、今後は誰か見守りが必要だろう、といった見積もりを立てることができます。 それに基づいて、退院までに行うものや人の環境を整える提案をすることができるのです。
また脳卒中を起こした患者さんにひどい糖尿病があることがわかれば、その治療を行うことはもちろん、これまでの食生活について聞いたり、食生活を改められるよう食事や提供する人、退院した後の通院先を整える提案をする必要があるでしょう。
患者さんが病院に来るまでの様子について、医師もその場にいたかのように知ることを、「再現ドラマを回すように」と表現しているのです。
また、話だけではなく、自宅の写真や他の関係者の話(もともと通院していた病院の先生など)も参考にすることが多いです。
実際には患者さんが入院してきたその日に全てがわかるわけではなく、何度も話したり身体を診察する中でわかることも多いです。
自宅の周りの様子については、患者さんの同意をいただければGoogleストリートビューなども活用することがあります。
これを読んで、医師や看護師、療法士が何度も患者さんに転んだ時のことや元々の生活について尋ねる理由をご理解いただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、今回もありがとうございました。
