「立ち上がり訓練」について改めて考えた

皆さんこんばんは。
依然としてコロナウイルスの影響で外出や運動が十分できない方が多いと思います。
4月にご紹介した「立ち上がりトレーニング」について、今日は私が勤務先の病院で行っていることを含めて改めてお伝えしたいと思います。

平日の夕方16時半。私たちリハビリ科医の一つの仕事が始まります。
病棟放送で「これから立ち上がり訓練を始めます。こぞってご参加ください」とアナウンス。
次に病棟の廊下で壁沿いにイスを並べ、患者さんが病室から出てくるのを待ちつつ、ラジカセであの曲をかけます。


「タータラララッタラララー」
そう、かの名バレエ曲「ボレロ」です。
静かに廊下にボレロが響き始める時、患者さんがぞろぞろと部屋から廊下に集合します。ある方は車いすで、またある方は歩行器で、杖で。多い日は10名、少なくとも5名は参加されます。
私たちが並べた椅子に着席すると、ボレロの合間に響く「ピンポーン」の音に合わせて、立つ・座るを繰り返します。
皆さん廊下の手すりにつかまって立ち座りができるよう壁をむいて座るので、後ろから見るとたくさんの患者さんが壁に向き合って一斉に動く、荘厳な雰囲気を感じます。(あたかも祈りを捧げるエルサレムの「嘆きの壁」のようでもあります。画像はWikipediaより)

私たちは患者さんたちが安全に、しっかりと立ち座りができているかをチェックします。だんだん疲れてバランスが崩れる方、音についていけなくなる方には声をかけて、休憩するよう促します。
高次脳機能障害や難聴のため音に合わせることができず、隣の方の動きに合わせて動いている方もいます。
患者さん同士声をかけあったり、回数を数えて決まった回数まで頑張る方もいます。

17時、曲が終わると私たちは終了を告げ、患者さんたちは解散します。
この30分に込められた意味はなんだろうかと、私はずっと考えていました。
まず、運動を行うことの意味については30年以上前に私の上司がエビデンスを出しています。「車いすを日常使う患者さんは8秒に1回立ち座りを行う負荷が心肺機能の維持に最適である」というもので、残念ながら文献にはなっていませんが最近それを読むことができました。その当時からずっと続けている病棟行事だそうです。
もう一つの意味は、私たち医師が患者さんと「同じ時間を共有する」ことだと思います。
私たち医師は他の科に比べると比較的長く患者さんに接しているかもしれませんが、それでも看護師や療法士には及びません。そんな中で、患者さんと共有できる時間が確保されることで、患者さんとの信頼関係にも繋がると思います。
また、自分が担当していない患者さんとも仲良くなれたり、変化に気づくことができるのも魅力です。

いろいろと語ってしまいました。
この立ち上がり訓練が、他のところでも広がったら嬉しいです。
明日も元気に立ち上がり訓練に参加できるよう、この辺で。
おやすみなさい。

注:ボレロは著作権フリーです。

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