そもそも、リハビリテーションとは何でしょうか?
この記事ではリハビリについて、またその目的・目標についてお伝えします。
さらに他の診療科との違いや、リハビリ科に特徴的な患者さんの見方について説明します。
・リハビリの語源と歴史、目的
リハビリテーション(Rehabilitation)は
Re:再び
Habi:適した
Tation:すること
という語源から成る言葉です。1)
約100年前の第一次世界大戦のころ、戦争で怪我を負った人の社会復帰を目指すという意味で医療の中でリハビリテーションという言葉が使われ始めたと言われています。2)
前々回の記事の冒頭に書いた「足を怪我した後、リハビリ室で歩く練習をする」というリハビリのイメージが一般的かも知れませんが、本当のリハビリはこの語源のようにただ身体や頭をよくするだけではありません。
リハビリの本当の目的は、
・(たとえ障害を持ったとしても)社会的になんらかの参加ができること
・そして、生きがいを見出し幸せに生活すること
だと私は考えています。
また、本人が身体の状態を良くしたり社会復帰を目指すだけでなく、周りの環境(人・もの)を変えていくことも広い意味でのリハビリだと思います。
たとえば最寄り駅に階段しかなかったとして、車いす生活を余儀なくされた場合に、駅にエレベーターを設置してもらう、といったことです。
・他の診療科(内科、外科など)とリハビリ科の違い①
内科や外科などほとんどの診療科における医療の目的はまず「治すこと」です。
例えば、がんが見つかった場合は手術や抗がん剤でがんを治す、といった具合です。
治らない難病などの場合には、「できるだけ落ち着いた状態を保つ」ことを目標に治療します。
リハビリ科でも「治すこと」「できるだけ落ち着いた状態を保つ」こともありますが、特徴的なことは、「治らないことを受け入れ、それに適応していく」、という考え方です。
例えば事故でや病気で足を切断した場合は、歩くことを諦めるのではなく「義足」(失った足の代わりに足に装着する器具)を履いて歩いたり電車やバスに乗れることを目指します。
・他の診療科(内科、外科など)とリハビリ科の違い②
また、ほとんどの診療科は、循環器内科では心臓を、消化器外科は胃や肝臓、のように身体の中の特定の部分の専門家として医療を行なっています。
それに対してリハビリ科は特定の部分をみるのではなく、脳も骨も心臓も肺も筋肉も、という風にどの部分の病気に対してもアプローチすることが可能です。
すべての部分のさまざまな病気や怪我(がん、炎症、感染症、骨折など)により身体の具合が悪くなることに対して、その身体を応援することができるのがリハビリ科の強みです。
・病気だけをみるのではなく、生活をみる科
さらに、リハビリ科は病気などによって弱った身体をよくするだけではなく、患者さんを「生活する1人の人間」として広い目でみることが得意です。
この考え方は、小難しい言葉ですが「ICF(国際生活機能分類 の略語)」というものに表されています。
図1に示したように、ICFでは1人の患者さんを取り巻く状況をまとめます。

従来の医療では「健康状態(変調または病気)」と「心身機能・身体構造(病気の結果具合が悪いところ)」に注目していました。
リハビリ科では、さらに1人の患者さんを取り巻く状況として以下のことに注目します。
・活動(その身体の状態によってどんなことができない、あるいはできるか)
・参加(その身体の状態で社会的にどんな状態に置かれているのかなど)
・個人因子(どんな趣味嗜好があるか、医療に対してどんな希望を持っているか)
・環境因子(どんな家族と暮らしているか、家の環境はどうか、どんな仕事をしているかなど)
こうしたことに一つずつ目を向けることで、より多面的に患者さんの生活に対してアドバイスをしたり必要な支援を行うことができるようになります。
医療だけというより、福祉や介護の分野に近い存在といえると思います。
最後に、架空の例をICFの図にまとめてみました(図2)。

少しでもリハビリのイメージとして参考になれば幸いです。
1) 日本リハビリテーション医学会, リハビリテーション医学・医療コアテキスト, 2018, 医学書院
2) 長谷川幹, リハビリ 生きる力を引き出す, 2019, 岩波新書