世界的「運動不足」の中、いま私たちが家の中でできる運動

新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため影響で不要不急の外出を自粛するよう国を挙げて求められています。

結果として人々が自宅にいる時間は増え、そこで気になるのが「運動不足」です。

この記事ではまず、運動不足がどのような悪影響を及ぼすのかを説明します。次に、リハビリ科医として実際に病院で患者さんに行っている運動の方法を紹介したいと思います。

●運動不足の恐ろしさ

当たり前のことですが、自宅にいると歩く距離が減ります。

厚生労働省の調査1)によると、平成27年(2015年)の日本人の平均歩数は男性が7194歩、女性が6227歩でした。

また「健康日本21」という厚生労働省が示している健康のための指針によると、目標とする歩数は男性8202歩、女性7282歩です。

一方、自宅から1日中出ない場合と比較します。

私の妻が一度も家から出なかった日の歩数は約600歩でした。(妻のスマートフォンの記録より)

なんと上記の平均歩数や目標とする歩数の10分の1以下です。

ここから少し医学的な話をします。

人間も動物なので、筋肉をはじめ身体を動かさなければ硬くなり力が衰えてしまいます。

単純に歩数だけで比較するのは適切ではないかもしれませんが、仕事などで外出していた時に比べ10分の1も歩いていない現在の状況が続くのは身体の衰えを加速させるでしょう。ちなみに過去の研究によると、安静臥床(全く動かないこと、いわゆる寝たきり)の状態が1日続くと筋力が1〜4%低下し、10日間続くと筋力が約20%低下するとされています。2)

こうした状況を医学用語で「廃用症候群」と呼びます。

廃用症候群は筋肉や関節だけではなく、心臓や肺など内臓の機能の衰え、また疲れやすさや立ちくらみなどの症状が出やすくなることが知られています。廃用症候群になると、コロナウイルスに感染した場合の回復も遅くなることが懸念されます。

あくまでこれは完全に寝たきりで過ごした場合なので、家で生活するだけではここまでには至らないでしょう。ただし運動ができない状態が続くことは望ましくありません。

感染拡大予防のため外出しないことは非常に重要ですが、家の中にこもって運動をしないことは、感染に備えるという意味ではデメリットになるのです。

●自宅内で楽しく運動する方法は

上記の現状もあり、最近Nintendo Switch®などのフィットネスゲームの売り上げが伸びているそうです。

もちろん家の中でこうしたゲームを楽しむのもよいですが、できるだけお金をかけずに運動をする方法はないでしょうか。

特に、マンションなどの集合住宅では足音や振動で下の階に迷惑をかけずに運動できるものが良いでしょう。

そこで、「立ち上がりトレーニング」を提案したいと思います。

●立ち上がりトレーニング

これはリハビリの現場ではよく行われているもので、椅子からの立つことと座ることを繰り返し行うものです。

椅子から立つこと、座ることは私たちが普段何気なく行っている動作です。足や体幹の筋力を維持するために、時間や回数を決めて椅子からの立ち上がりを行うことをお勧めします。(椅子さえあればどこでもできるので、お金もかかりません!)

ただ、ただ立って座るだけを延々と・・というのは苦痛です。そこで、私の勤務先で入院患者さんと行なっている「立ち上がりトレーニング」をご紹介します。

バレエ曲「ボレロ」に8秒間に1回チャイムが鳴るよう編集した音源です。

これを流しながら、チャイムが鳴るごとに立つ、座る運動を繰り返します(図1参照)。チャイムの間隔は病院では8秒ごとですが、体力のある方や若い方は4秒ごと間隔の方が良いでしょう(以下のリンクから利用してください)。

ボレロは1曲約15分間あり、112回立ち上がりを行うことができます。曲が終わる頃にはじんわりと身体が温かくなるのを感じられるでしょう。人によっては汗をかくかもしれません。

●運動に際しての注意点

① 運動を始める前にストレッチを行いましょう。

立ち上がりトレは股関節(足の付け根)や膝を曲げ伸ばしする運動なので、それらの関節や周りの筋肉が固いままに行うと痛めてしまう危険があります。具体的なストレッチの方法は図2を参考にしてください。

② 安全な椅子を準備しましょう。

4つ脚がある、安定した椅子で行いましょう。下にコマが付いているものは座った際に滑りやすく危険です。背もたれはバランスを崩した場合に備え、ある方がより安全です。

③ 立ち上がりのペースに注意しましょう。

8秒に1回のペースでも息が苦しくなったり胸がドキドキする方は体への負担が大きいと考えられます。その場合は休憩し、それでも症状が治まらない場合は中止してください。

何分できたか記録し、運動ができる時間を延ばすことを目標にするのが良いかもしれません(ただし記録を伸ばそうとして無理することがないように)。

④ 転ばないように注意しましょう。

立ち上がる際に立ちくらみを起こして倒れることや、足の力が抜けて転ぶことが考えられます。

特に高齢の方に起こりやすいので、机や手すりの前に椅子を置いていつでも掴める場所を確保して行うようにしましょう。また、お孫さんなど複数人で一緒に行うのも良いでしょう。

●最後に

外出ができないことによる運動不足の解消法をリハビリ科医の視点で考えてみました。

お読みいただいた方の参考になれば幸いです。

参考資料

1)厚生労働省 「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」

2)園田茂:不動・廃用症候群. Jpn J Rehabil Med 2015 ; 52 : 265.271

図1、2:「すぐに使える!リハビリのイラスト集」 https://ribabili-illustration.com/ を元に一部修正


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